ショルダーバッグ 制作過程
商品制作の合間にコツコツと自分用の革バッグを作りました。
およそ一年かかりましたが、イメージ通りのバッグが出来上がりました。
デザイン・機能
デザインの方針をこのように決めました。
・カジュアルな服装にあう、すっきりとシンプルな形状、上品な感じ
・両手の空くショルダータイプで、コンパクトサイズ(スマホ、折りたたみ傘が入る大きさとマチ幅)
・なるべく軽量
・革色は黒、金具はシルバー系
・片手で開け閉めができ、モノの出し入れを楽にできるように開口部はベルトに
・バッグの内側にはふた付きポケット
・ショルダーベストは肩に食い込まない広幅で長さ調整ができる
材料
今回はクロムレザーの定番革 ドラムダイを選択しました。この革は適度な柔らかさで、きれいな光沢があります。キズや少々の水濡れにも強く、バッグなど袋物に適しています。
ショルダーベルトは38㎜巾のナイロンテープにします。ストライプ状に縦に縫込みが入っているデザイン性の高いものを選びました。長さ調節金具はスクエアな形状のものを選びました。
革のベルトは、重い、滑りやすい、汗に弱いなど、機能的な理由で選択しませんでした。
内装は多少の遊び心で、黒とカーキのコントラストの弱い迷彩柄の布にしました。
制作のポイント
ドラムダイは薄手でやわらかめの革なので、適宜芯材が必要です。バッグ用の糊付きフエルト芯を使用します。
クロムレザーはコバ磨きができないので、表に出る切り口は基本的にすべてヘリ返すことにします。
バッグが自立できるだけの強度を持たせるため、胴体とマチはパイピングで連結します。
制作経過
裁断
本体を構成するパーツはシンプルです。胴体両面、マチ(底部分で2本を縫い合わせ)、パイピング用の革2本、開口部の巻革です。
これ以外に、開口部のベルト用革、ショルダーベルトの留め革を同じ革で切り出します。
バッグ本体の制作
パイピング用の革を準備します。細長い革を縦に貼り合わせますが、終端部分は薄く漉き、さらに内側に織り込みやすくするため楔型の切り込みを入れます。糊しろの個所はスクラッチして粗くしておきます。
胴体は縫い代を残して床面の全面にフエルト芯を貼ります。後からだと作業しにくいので、前胴になる側にはあらかじめマグネット(凹)を付けてしまいます。
マチ革は中心部で貼り合わせてステッチし、胴体同様に芯材を貼ります。
胴、マチどちらも縫い代部分は薄く漉いてあります。また、表面(銀面)の糊しろはスクラッチして粗くしておきます。
いわゆる「なかおもて」=できあがりで外側になる部分を内、内側になる部分を外にして胴体、マチ、パイピング革を貼り合わせます。
マチはおおよその長さを計算して、少し長めに作ってありました。バッグの底部分の中心から本体と貼り合わせた後に、開口部で切りそろえました。
縫い代をステッチしてゆきます。厚みがあるので一目一目、慎重に進めます。胴体の周囲に沿ってきれいに縫いそろえてゆかないと、あとでパイピングがきれいに表に出ないので、ここは重要で時間のかかる工程です。
ステッチが終わったら、本体の裏表を返します。やわらかくてしわのできにくい革ですので、比較的楽に返せますが、無理に力をいれると芯材がはがれたりゆがんだりします。ここも慎重に少しづつ返してゆきます。爪で革に傷をつけないように手袋をして行います。
開口部のベルトとショルダーベルト通しの取り付け
開口部に取り付けるベルトを準備します。
ベルトの幅で印象がだいぶ変わります。いくつか幅違いを作ってバッグ本体に仮留めし、全体の印象を確認しながら幅を決めました。
カーブを描くようにくせを付けながら芯材を貼り、周囲をヘリ返して内側で貼り合わせ、別の革をかぶせて周囲をステッチします。先端にマグネットの凸を取り付けます。前面のマグネット凹にちょうど合うように位置調整を行い、後面にできたベルトを取り付けます。
ショルダーベルトを通す金具(角カン)と留め革を制作します。革の端材を芯にして強度を出します。周囲を漉いてヘリ返します。これを2つ作り、本体の両サイドに取り付けます。
内装
バッグ本体にすっぽり入る大きさで採寸し、内装を制作します。片面にファスナーポケット、もう片面にはホックをつけた大き目のポケットを作りました。マチ布とミシンで縫い合わせてU字型の袋状にします。
縫いあがった内装をバッグ本体に納めたら、開口部をボンドで仮止めし、内装のはみ出た部分は切りそろえます。
本体仕上げ
開口部に巻く革を準備します。外側にくる方は革のコバを薄く漉いてヘリ返します。内側は切ったままにします(両面へり返すと厚ぼったくなりますので)。
開口部に沿ってぐるっと巻革をまき、表裏貫通させながらステッチしてバッグ本体の完成です。
ショルダーベルトの取り付け
ショルダーベルト用のナイロンテープにアジャスター金具(コキカン)を通し、テープの両端用に同じ革で留め革を準備します。一端は本体の角カンを通してからコキカンに固定し、もう一端はバッグ本体の反対側の角カンに固定して縫い留めます。
バッグが完成しました。
カジュアルすぎないイメージ通りのバッグが出来上がりました。たすき掛けで体にフィットして使いやすいです。
大きさも丁度よく、想定した小物が程よく収まり、かつ出し入れがスムースにできて大満足です。ショルダーベルトの太さも肩に食い込まず楽です。
なにより革のバッグにしては軽量なのが嬉しいです。
反省点としては、マチが浅いため、内装のファスナー付きポケットは開け閉めしにくくなってしまいました。ファスナーはほとんど開けたままで使うことになりそうです。