制作風景 50枚入る名刺入れ

名刺が50枚入る名刺入れ。昔ながらの旅行トランクをイメージしてデザインしました。箱を組み立てたような立体構造になっています。横のマチ(厚み)部分ではステッチをあえて際立たせ、名刺入れのチャームポイントにしました。

50枚入るシンプル名刺入れ
名刺約50枚入る厚みがあります。
かぶせぶたの内側には2段ポケットを付けました。

この名刺入れは、メインの大きな革1枚と、2段ポケット用の小さな革2枚のシンプルなつくりになっています。補助材料として、メインポケットの補強用に薄手の豚革を使用します。

革の下準備

型紙通りに革を裁断する前に、いくつか下処理をします。この工程の有無で、作品の出来栄えや耐久性がかなり違ってきます。重要な工程です。

まず、粗裁ちした革の床(とこ、革の裏面)を専用糊を用いて磨きます。ご存じのように革の裏側(内側)は細かい起毛状態になっています。そのままではザラザラしすぎているので、磨いて滑りをよくしておきます。

磨くときはガラス板を下に敷いて、専用糊を塗布したら、ウェス(綿布の端切れ)で磨き、さらにヘラで平らになるように丁寧に整えます。

床磨き

名刺の出し入れをするメインポケットの入り口は、内側に豚革を貼って補強をします。よく触れる箇所は傷みや型崩れが起きやすいので、しっかり補強をします。補強用の豚革は厚さ約0.5mmの薄いものを使用しますが、それでも貼ったところに段差ができるので、表側に段差が浮き出ないように周囲部分だけ漉いておきます。磨き終わったら、メインの革と貼り合わせます。

革の裁断と目打ち

革を裁断します。写真上2/3は箱のように折りたたんでメインポケットになる部分、下1/3は名刺入れのかぶせぶたになり、内側に2段ポケットが付きます。メインポケット(写真上部)には半円の切り欠きをいれて名刺を取り出しやすくします。

箱状に折りたたんでコーナーになる個所は、切り込む先端(奥の方)を丸く抜きます。これにより、革の裂けを防ぎます。単純に長方形の切り込みよりも先端が丸いほうが、耐久性がぐんと増します。

この小さな突起のような個所は、あとで折りたたんだ際、メインポケットの内側で革の厚みの分が邪魔になってしまいますので、内側の先端を斜めに漉いておきます。

2段ポケットも裁断し、目打ちまで完成したところです。これからステッチです。

段ポケットの作成

まず、2段ポケット用パーツからです。ポケットの入り口には革の縫い合わせはありませんが、補強と伸び防止のためにステッチをします。

ステッチをしたらコバ(革の切り口)をヤスリで整え、ふのり(コバ磨き用糊)で磨きます。光沢がでたところで、焼きこてをつかって化粧捻(ねん)を引きます。

2段ポケットは革が2枚重ねになります。メインポケットと縫い合わせる時には、革が都合3枚重なり、その部分だけが厚くなってしまいます。そこで、外側からは見えない下側のポケットのヘリ(縫い合わせるところ)を漉いておきます。

メインの革と貼り合わせた際に、目打ち穴が裏表ちょうど合わさるように2段ポケットに目打ちをします。

ステッチが終わったら、ポケットのはみ出した部分をメイン革に沿って切り落とします。さらにコーナーは丸く切り落とします。

メインポケットの作成

箱型に組み立てる前に、メインポケットの入り口箇所だけ補強のためのステッチをします。

それができた時点で、全て周囲のコバを先に仕上げます。

箱になる部分の内側のマチに、のりしろを作るため、表面を削ります。表面を削ることによりボンドの付きが格段に良くなります。

内側に折癖をつけます。

ボンドを塗り、折りたたんで箱状にします。

表側からキリで目を内側に貫通させてステッチの準備をします。

両サイドをそれぞれステッチします。間口が狭いので、短い針を使ってゆっくり慎重に進めます。

最後に、かぶせぶたの折癖をつけて完成です。

とてもシンプルな形状の外観ですが、見えないところには多くの工夫が盛り込まれていることをお伝えできれば嬉しいです。

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